労働保険の継続一括とは?~複数の事業所をまとめて管理する仕組み~

会社を経営していると、複数の支店や営業所、工場などを運営することがあります。その際に必要になるのが「労働保険(労災保険・雇用保険)」の適用です。原則として、労働保険は事業所ごとに成立するため、それぞれの事業所で加入や申告・納付を行う必要があります。しかし、事業所が多いと管理が煩雑になり、経理や人事の担当者にとって大きな負担となります。

このようなときに活用できる制度が「労働保険の継続一括」です。この記事では、継続一括の概要、要件、手続き方法についてわかりやすく解説します。


■継続一括とは?

労働保険の「継続一括」とは、同じ事業主が複数の事業所を運営している場合に、すべての事業所を一つの事業としてまとめて扱うことができる制度です。これにより、労働保険の成立・年度更新・保険料の納付などを「まとめて」行えるようになります。

たとえば、本社と3つの営業所を持つ会社が、それぞれで別々に労働保険の手続きを行うと4か所分の管理が必要です。しかし、継続一括を認めてもらえれば「本社にまとめて一本化」できるため、事務処理が大幅に効率化されます。


■継続一括の対象と要件

継続一括の対象となるのは、常時事業として行われる複数の事業所です。一方、建設業のような「一つ一つの工事ごとに期間を区切って行われる事業(有期事業)」は原則として対象外となります。

主な要件は以下の通りです。

・事業主が同一であること
複数の事業所が同じ法人、または同じ個人事業主のもとで運営されている必要があります。

・事業の種類が同種または関連性があること
例えば、本社(管理部門)と営業所や支店、工場などは継続一括の対象となります。ただし、業種がまったく異なる場合は認められないことがあります。

・事業所が常時存在していること
期間限定の事業ではなく、継続して運営されている事業所である必要があります。

・労働保険事務が一括して処理可能であること
実際に経理や労務管理が本社などでまとめられている場合に、継続一括が認められやすくなります。


■継続一括のメリット

・事務負担の軽減
申告書や納付書を本社で一本化できるため、複数の事業所ごとに手続きを行う手間がなくなります。

・納付の効率化
保険料を一括で納付できるため、納付漏れや重複のリスクが減少します。

・管理の明確化
本社で一元的に管理できるため、労務管理や会計処理がスムーズになります。


■手続きの流れ

継続一括を行うには、労働基準監督署および公共職業安定所(ハローワーク)へ申請を行います。大まかな流れは次の通りです。

①申請書の作成

「継続事業一括申請書」を作成し、管轄の労働基準監督署へ提出します。
申請書には、事業主名、本社の所在地、一括したい事業所の情報などを記載します。

②労基署での審査

提出された内容が要件を満たしているか確認されます。場合によっては、事業所の運営状況や労務管理体制について追加の説明を求められることもあります。

③承認通知の受領

承認されると、本社を「一括事業所」として扱うことができるようになります。以降は、本社でまとめて労働保険の年度更新や納付を行うことになります。

・注意点

一度継続一括が承認されると、原則としてすべての事業所が対象となるため、一部だけを外すことはできません。(外す際には手続きが必要です)

新たに事業所を設立した場合は、速やかに一括事業所へ追加の手続きを行う必要があります。

承認後も、事業の種類が大きく変わったり、事業の一部が独立したりした場合には、再度見直しが必要となります。


■まとめ

労働保険の継続一括は、複数の事業所を抱える会社にとって大きなメリットのある制度です。手続きの手間が減り、労務管理も効率化されます。ただし、要件や申請の流れには注意が必要であり、場合によっては専門的な判断が求められることもあります。

「自社は継続一括の対象になるのか?」「申請手続きをスムーズに進めたい」など、ご不明な点があれば、社会保険労務士にご相談ください。当事務所でも、会社の状況に応じた最適な方法をご提案し、手続きのサポートを行っております。

社会保険労務士 髙田 登史子

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