雇用保険の制度を詳しく解説 ~知っておきたい給付と活用方法~

会社で働く従業員にとって「雇用保険」は身近な制度の一つですが、実際にどんな仕組みがあるのか、細かい内容まで理解している方は少ないかもしれません。
雇用保険は、失業時の生活を支えるだけでなく、在職中のキャリア形成や育児・介護との両立を支えるための制度も含まれています。今回は、雇用保険の制度と受けられる給付について分かりやすく解説します。


■雇用保険とは?

雇用保険は、労働者が失業したときや、雇用を継続しながら育児や介護に取り組むときに、生活や再就職を支えることを目的とした制度です。
原則として、週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがある労働者(昼間学生を除く)が対象となり、会社と労働者が保険料を負担しています。


■主な給付の種類

1. 失業給付(基本手当)

最もよく知られているのが「基本手当」です。離職後、就職活動をする人に対して一定期間支給され、生活の安定を図ります。支給日数や金額は、離職理由や年齢、被保険者期間によって変わります。倒産や解雇など「特定受給資格者」は手厚い給付を受けられる仕組みになっています。

2. 育児休業給付

育児休業を取得する際、一定の要件を満たすと「育児休業給付金」が受け取れます。原則として休業開始時賃金の67%(一定期間経過後は50%)が支給され、子育てと仕事の両立を金銭面から支援します。男女問わず対象となるため、男性の育休取得を後押しする役割も果たしています。

3. 介護休業給付

家族の介護のために休業する場合には「介護休業給付」が支給されます。賃金の67%が支給され、最大93日まで取得可能です。高齢化が進む中で、仕事と介護を両立させるための大切な制度です。

4. 教育訓練給付

雇用保険に一定期間加入していると、資格取得やスキルアップのための講座を受講する際に費用の一部が支給されます。一般教育訓練給付、専門実践教育訓練給付、特定一般教育訓練給付の3種類があり、最大で受講費用の70%まで支給される制度もあります。キャリア形成を支える制度として注目されています。

さらに、2025年10月1日からは、雇用保険加入者が仕事を休んで大学や専門職大学院などに通う場合にも、新たに給付が受けられるようになりました。 これにより、働きながら学び直しを希望する方だけでなく、一度キャリアを中断して集中的に学ぶ方にも支援が広がります。国が「リスキリング(学び直し)」を強力に後押ししている表れといえるでしょう。

5. 高年齢雇用継続給付

定年後も引き続き働く場合、60歳以降の賃金が下がった際に支給されるのが「高年齢雇用継続給付」です。一定の要件を満たすと、賃金の最大10%が支給され、シニア世代の就業継続を支援しています。


■雇用保険を活用するメリット

雇用保険の大きな特徴は、「失業したときだけでなく、在職中にも役立つ制度がある」という点です。
育児や介護に対応できるだけでなく、スキルアップのための教育訓練給付を利用すれば、会社にとっても従業員にとってもプラスになります。
また、高年齢雇用継続給付はシニア人材の活用に直結し、労働力不足対策にもつながります。


■まとめ

雇用保険は、労働者の生活を守り、キャリア形成やワークライフバランスを支える大切な制度です。基本手当のほか、育児・介護・教育訓練・高年齢雇用継続といった幅広い給付が用意されています。
制度を正しく理解し活用することで、従業員の安心や企業の安定した経営にもつながります。

当事務所では、雇用保険に関する手続きや給付の相談に対応しております。従業員の採用・退職や、育児・介護休業に関する実務でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

社会保険労務士 髙田 登史子

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