労働保険・社会保険の遡り加入はどこまで可能?企業が知っておくべきポイント

会社が従業員を雇用した場合、一定の条件を満たすと社会保険(健康保険・厚生年金)や雇用保険に加入させる義務があります。しかし実務では、「加入対象だと思っていなかった」「手続きを忘れていた」といった理由で、保険の加入が遅れてしまうケースも少なくありません。

そのようなときによく質問されるのが、「今からでも遡って加入できるのか?」という点です。

結論から言うと、社会保険と雇用保険では遡れる期間の考え方が少し異なります。また、状況によっては会社に大きな負担が発生することもあります。

今回は、社会保険と雇用保険の遡り加入について、企業が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。


①社会保険・雇用保険の「遡り加入」とは

「遡り加入」とは、本来加入すべきだった時点までさかのぼって保険加入の手続きを行うことをいいます。

例えば次のようなケースです。

✓フルタイムで働いている従業員がいた
✓本来は社会保険加入対象だった
✓しかし会社が加入手続きをしていなかった

このような場合、行政機関から指摘を受けたり、従業員から申し出があったりすると、過去に遡って加入手続きを行うことになります。

ここで重要なのは、加入手続きをしていなくても、加入義務がある場合は「未加入」扱いになるという点です。

つまり、「手続きをしていなかったから加入していない」ということにはならず、本来加入すべきだった期間について問題になる可能性があります。


②社会保険の遡り加入は「原則2年」

社会保険(健康保険・厚生年金)の場合、遡り加入には一定の期間制限があります

実務上の目安として覚えておきたいのが、社会保険の遡り加入は原則2年間という点です。

これは、社会保険料の徴収権が2年で時効となるためです。

例えば、3年前から社会保険加入対象の従業員がいたにもかかわらず、加入手続きをしていなかった場合でも、通常は直近2年間分の保険料を遡って納めることになります。

ただし注意したいのは、会社と従業員の双方に保険料負担が発生するという点です。

社会保険料は会社と従業員が折半して負担するため、2年分をまとめて調整する必要が出てくる場合もあります。実務では、この点がトラブルになることも少なくありません。


③雇用保険は2年以上遡るケースもある

雇用保険については、社会保険とは少し異なる取扱いがされることがあります。

一般的には、雇用保険も原則として2年間の遡り加入が基準とされています。しかし、状況によっては2年以上遡るケースもあります。

例えば次のようなケースです。

・会社が雇用保険の加入手続きをしていなかった
・従業員が退職後に失業給付の申請をした
・その際に未加入が発覚した

このような場合、ハローワークが調査を行い、勤務実態が確認できれば過去に遡って被保険者資格が認められることがあります

特に雇用保険では、失業給付を受けるために必要な「被保険者期間」が重要になるため、実際に働いていた事実を基準に判断されるケースが多いのが特徴です。

そのため、会社側の手続きミスによって未加入となっていた場合、後から遡って資格が認められる可能性があります。


まとめ

社会保険と雇用保険の遡り加入について、企業が押さえておきたいポイントは次のとおりです。

📌社会保険は原則2年まで遡り加入
📌雇用保険も基本は2年が基準
📌ただし雇用保険は2年以上遡るケースもある
📌未加入が発覚すると保険料をまとめて納める必要がある

特に近年は、年金事務所やハローワークによる調査、従業員からの申告などにより、過去の未加入が発覚するケースも増えています。

また、退職時の離職票の手続きや労働基準監督署の調査などをきっかけに、保険加入状況が確認されることもあります。

社会保険や雇用保険の加入判断は、勤務時間や雇用形態などによって細かく判断が分かれる専門的な分野です。

「この従業員は加入対象なのか分からない」
「過去に加入漏れがないか不安」

このような場合は、早めに社会保険労務士に相談することで、後から大きなトラブルになることを防ぐことができます。

社会保険労務士 髙田 登史子

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