休職中に社会保険料が発生し続けていた!実際の対応事例から学ぶ適切な対応方法

近年では、メンタルヘルス不調や私傷病などを理由に、従業員が長期間休職するケースは決して珍しくありません。

休職制度自体は多くの企業で整備されていますが、実際に休職者が発生した際には、「傷病手当金はどうなるのか」「社会保険料は誰が負担するのか」「復職後はどのように精算すればよいのか」など、制度の運用面で悩まれる企業様も多くいらっしゃいます。

今回は、当事務所へご相談いただいた事例をもとに、休職中にも社会保険料が発生し続けていたケースについて、会社が取るべき対応や、トラブルを防ぐためのポイントを解説いたします。


① 休職中でも社会保険料は原則として発生する

「休職に入ったので社会保険料は発生しないと思っていた」「給与を支給していないのだから保険料も不要ではないか」と考えられる方は少なくありません。しかし、実際にはそのような取り扱いにはなりません。

先日、当事務所へご相談いただいた企業でも、長期間休職していた従業員について、給与は支給していないものの、会社が社会保険料を立て替えて納付し続けていたというケースがありました。

健康保険・厚生年金保険は、「給与の有無」ではなく、「被保険者資格を有しているかどうか」によって加入が継続する制度です。そのため、休職によって賃金の支払いが停止していても、退職などにより資格を喪失しない限り、社会保険料は毎月発生します。

一方で、給与の支給がなければ従業員負担分を給与から控除することはできません。その結果、多くの企業では会社が一時的に保険料を立て替えることになります。


② 今回の事例で問題となったポイント

今回のケースでは、休職期間が想定以上に長期化したことにより、会社が立て替えた社会保険料が相当額に達していました。

さらに、休職開始時に社会保険料の納付方法や立替金の精算方法について十分な説明が行われておらず、復職後に一括で請求すべきか、分割で徴収すべきか判断に迷われていました。

このようなケースでは、会社が立て替えた保険料について従業員へ請求すること自体は可能ですが、その方法については慎重な対応が求められます。

例えば、復職後の給与から一括控除を行うと、手取り額が大きく減少し、生活への影響や労使間のトラブルにつながる可能性があります。また、本人の同意なく多額の控除を行うことは、賃金全額払いの原則との関係からも十分な配慮が必要です。

会社としては、本人と十分に協議を行い、分割での返済や返済計画を書面で取り交わすなど、双方が納得した上で精算方法を決定することが重要です。


③ トラブルを防ぐためには休職開始時の対応が重要

こうした問題は、休職制度そのものではなく、休職開始時の説明不足によって生じるケースが少なくありません。

休職に入る際には、社会保険料が休職中も継続して発生すること、会社が立て替える場合には後日精算が必要になること、さらに傷病手当金との関係などについて事前に説明しておくことで、多くのトラブルを防ぐことができます。

また、休職規程や就業規則に社会保険料の取扱いを明文化しておくことも重要です。

「会社が立て替える場合の精算方法」「復職時・退職時の取扱い」まで規程に定めておくことで、後日の認識相違を防ぎ、円滑な労務管理につながります。

制度だけを整備するのではなく、実際の運用方法まで明確にしておくことが、企業のリスク管理として重要なポイントといえるでしょう。


まとめ

休職中で給与の支払いがなくても、被保険者資格を喪失していない限り、社会保険料は原則として発生し続けます。

そのため、会社が保険料を立て替えるケースでは、後日高額な精算が必要となり、従業員とのトラブルに発展することもあります。

重要なのは、「休職開始時に社会保険料の取扱いを丁寧に説明し、精算方法まで含めて双方で認識を共有しておくこと」です。また、就業規則や休職規程へ社会保険料の取扱いを明記しておくことで、より適切な制度運用が可能になります。

社会保険料の取扱いや休職制度の整備・運用は、企業ごとに事情が異なります。休職者への対応や就業規則の見直し、社会保険手続きについてご不安な点がございましたら、社会保険労務士事務所Labor Partnerまでお気軽にご相談ください。

社会保険労務士 髙田 登史子

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