賞与から控除する社会保険料の計算方法は? 社労士が分かりやすく解説

賞与(ボーナス)を支給する際、「毎月の給与と同じように社会保険料を計算している」と思われている方は少なくありません。

しかし実際には、賞与の社会保険料は給与とは異なるルールで計算されています。

毎月の給与では、「標準報酬月額」という等級表をもとに健康保険料や厚生年金保険料が決定されます。一方で、賞与については「標準賞与額」という仕組みが採用されており、給与とはまったく異なる考え方になります。

給与計算ソフトを利用している場合は自動で計算されるため、普段は意識することが少ないかもしれません。しかし、従業員から「なぜこの金額が控除されているのですか?」と質問された際や、手計算で確認する場面では、この仕組みを理解しておくことが重要です。

また、賞与の社会保険料は会社と従業員双方に影響するため、企業の人件費を把握するうえでも欠かせない知識といえるでしょう。


「標準賞与額」とは?計算方法は意外とシンプル

賞与の社会保険料を計算する際に基準となるのが、「標準賞与額」です。

標準賞与額とは、税金や社会保険料を控除する前の賞与総額(総支給額)から、1,000円未満を切り捨てた金額をいいます。

例えば、

●賞与額:498,650円
●標準賞与額:498,000円

となります。

その後、この標準賞与額に健康保険料率や厚生年金保険料率を掛けることで、社会保険料が算出されます。

つまり、

「標準賞与額(1,000円未満切捨て)×保険料率=社会保険料」

という流れになります。

毎月の給与では、標準報酬月額表から等級を確認する必要がありますが、賞与では等級表を使用しないため、計算方法自体は比較的シンプルです。

ただし、健康保険料率は加入している健康保険組合や協会けんぽの都道府県によって異なります。また、40歳以上65歳未満の方は介護保険料も加わるため、同じ賞与額でも従業員によって控除額が異なる場合があります。


上限額や賞与の支給回数にも注意が必要

賞与の社会保険料には、計算の基礎となる標準賞与額に上限が設けられています。

健康保険では、年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)の累計で573万円が上限です。

一方、厚生年金保険は、1か月あたり150万円が上限となっています。同じ月に賞与を2回以上支給した場合には、その合計額で判定されます。

通常の賞与では上限を超えるケースはそれほど多くありませんが、役員賞与や業績連動型の賞与、高額な決算賞与を支給する企業では、上限の確認が必要になることがあります。

さらに見落とされがちなのが、「賞与の支給回数」です。

社会保険では、年4回以上支給されるものは、名称が「賞与」であっても賞与とは扱われず、「報酬」として取り扱われる場合があります。

その場合は標準報酬月額の対象となり、算定基礎届や随時改定にも影響する可能性があります。

賞与の支給方法を変更する際には、社会保険上の取扱いもあわせて確認しておくことが重要です。


まとめ

賞与から控除する社会保険料は、毎月の給与とは異なり、「標準賞与額」を基準として計算される点が大きな特徴です。

標準賞与額は、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた金額であり、これに健康保険料率や厚生年金保険料率を掛けて社会保険料を算出します。

また、健康保険・厚生年金保険にはそれぞれ上限額が設けられているほか、年4回以上支給される賞与については報酬として取り扱われる場合があるなど、実務上注意すべきポイントも少なくありません。

給与計算ソフトを利用していても、「なぜこの金額になるのか」という仕組みを理解しておくことは、正確な給与計算や従業員への説明につながります。

賞与計算は年に数回しか行わないため、計算方法を忘れてしまう担当者も少なくありません。賞与計算や社会保険料の取扱いに不安がある場合は、社会保険労務士へ相談し、正確な計算と適切な運用を行うことをおすすめします。

社会保険労務士 髙田 登史子

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