2027年1月開始!療養・育児・介護で給与が減った場合の社会保険料を早く見直せる特例とは?

従業員が育児や介護、病気の治療などを理由に勤務時間を短縮すると、給与が大きく減少することがあります。

一方で、給与が減少したからといって、社会保険料がすぐに下がるとは限りません。標準報酬月額の改定には一定のルールがあるため、実際の給与と社会保険料の負担にタイムラグが生じることがあります。

こうした問題に対応するため、2027年1月から、療養・育児・介護と仕事の両立を目的として給与が減少した場合に、社会保険料をより早く見直すことができる新たな特例が始まります。

今回は、この新しい制度について、「どのような従業員が対象になるのか」「いつから社会保険料が変わるのか」「会社は何をすればよいのか」といったポイントを、企業の実務に沿って分かりやすく解説します。


給与が減っても社会保険料がすぐに下がらない問題

従業員が病気の治療や育児、介護などを理由として勤務時間を短縮すると、それに伴って給与が大きく減少することがあります。

例えば、これまで月給40万円だった従業員が、子育てのために勤務時間を短縮し、月給25万円になったとします。

給与は大きく減少していますが、社会保険料は給与が減った翌月からすぐに下がるとは限りません。

社会保険料を計算する基準となる「標準報酬月額」は、原則として定時決定や随時改定によって見直されます。通常の随時改定では、固定的賃金の変動後、原則として3か月間の給与を確認する必要があります。

そのため、実際の給与は大幅に減っているのに、しばらくの間は以前の高い標準報酬月額で社会保険料を負担するというケースが生じます。

そこで、このタイムラグを解消するため、2027年1月から新しい特例制度がスタートします。


2027年1月から始まる「特例改定」とは?「年間上限」が新設

今回の制度は、療養・育児・介護と仕事を両立するために勤務時間を短縮したり、時間外労働を抑制したりした結果、給与が大幅に減少した場合に利用できるものです。

主な対象となるのは、次の要件をすべて満たす従業員です。

・療養、育児または介護と仕事を両立するため、勤務時間の短縮などの就労調整を行っている
・その結果、標準報酬月額が従前より2等級以上低下する
・その状態が3か月以上続くことが見込まれる
・本人が制度の利用について書面で同意している

ここでいう「療養」は本人の治療だけではなく、家族の傷病に伴う看護等も含まれます。

「育児」は就学前の子どもの養育、「介護」は要介護または要支援認定を受けた家族の介護が対象となります。

重要なのは、通常の随時改定のように3か月分の給与を待つのではなく、給与が減少した初月の報酬を基礎として、翌月から標準報酬月額を改定できる点です。

例えば、育児のため7月から勤務時間を短縮し、7月の給与が大幅に減少した場合、要件を満たせば8月から新しい標準報酬月額に変更できる可能性があります。


会社が手続きをする際の注意点

この特例は、従業員が自分で申請して完結する制度ではありません。

会社が必要な届出を行い、日本年金機構等へ手続きをする必要があります。

また、通常の随時改定とは異なり、固定的賃金が変動していること自体は特例の要件ではありません。

例えば、基本給そのものは変わっていなくても、育児や介護のために勤務時間を短縮し、残業を減らしたことで給与が大幅に減少したケースなどが想定されます。

一方で、制度利用によって標準報酬月額が下がることには注意が必要です。

社会保険料の負担が軽くなる反面、標準報酬月額を基礎として計算される傷病手当金や出産手当金、将来の老齢厚生年金などに影響する場合があります。

そのため、会社は社会保険料が安くなるというメリットだけを説明するのではなく、給付や将来の年金額への影響についても本人に説明し、書面による同意を得る必要があります。

さらに、就労調整が終了して給与が元の水準に戻り、標準報酬月額が2等級以上上昇した場合には、速やかに増額改定の手続きを行う必要があります。

会社側では、賃金台帳や出勤簿などの関連資料に加え、制度の対象となった療養・育児・介護の事実を確認できる書類について、届出から2年間保存することも求められています。


まとめ

今回の制度は、療養・育児・介護と仕事を両立する従業員にとって、給与の減少に合わせて社会保険料の負担を早期に見直せる重要な制度です。

特に企業としては、今後、育児や介護を理由として短時間勤務を選択する従業員が増えることも考えられます。

その際には、「給与が下がったから社会保険料もすぐ下がる」と単純に考えるのではなく、通常の随時改定に該当するのか、それとも今回の特例を利用できるのかを確認する必要があります。

また、特例を利用した後に勤務時間や給与が元に戻った場合の取り扱いなど、継続的な管理も重要です。

2027年1月以降、育児・介護・療養によって給与が大きく減少する従業員がいる場合は、社会保険料の改定方法を一度確認しておくことをおすすめします。

制度の対象になるかどうかの判断や、実際の届出には専門的な確認が必要となるケースもあります。社会保険の手続きだけでなく、従業員の働き方や会社側の対応まで含めて適切に進めたい場合は、社会保険労務士への相談を検討するとよいでしょう。

社会保険労務士 髙田 登史子

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