社会保険手続き「社保スポ」
BLOG
社会保険手続き「社保スポ」
BLOG
副業・兼業を認める企業が増えるなか、人事担当者から「社員が他社でも働いている場合、社会保険や雇用保険はどうなるのか」という相談を受ける機会も増えています。
「二つの会社で働いているから、保険料も二重に発生するのではないか」「勤務時間を合算して加入要件を判断するのか」といった疑問を持つ企業も少なくありません。
実は、社会保険と雇用保険では、複数の会社で勤務する場合の加入ルールが大きく異なります。
社会保険については、それぞれの会社で加入要件を満たせば二か所以上の事業所で被保険者となることがあります。一方、雇用保険は原則として、複数の勤務先の労働時間を自由に合算して加入する制度ではありません。
今回は、副業・兼業を行う社員について、社会保険・雇用保険の加入要件と企業が注意したい実務上のポイントを解説します。
健康保険・厚生年金保険の加入要件は、原則として勤務先ごとに判断されます。
例えば、二つの会社で働いている社員が、それぞれの会社で社会保険の被保険者要件を満たしている場合には、「二以上事業所勤務者」として、複数の事業所で社会保険の被保険者となります。
重要なのは、勤務時間を単純に合算して社会保険の加入要件を判断するわけではないという点です。
たとえば、A社では週15時間、B社でも週15時間勤務しており、合計で週30時間働いていたとしても、それぞれの勤務先において社会保険の加入要件を満たしているかを個別に確認する必要があります。二つの会社の労働時間を合算しただけで、社会保険の加入対象になるわけではありません。
一方、それぞれの勤務先で加入要件を満たした場合には、被保険者本人が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」を提出します。その後、各事業所から受ける報酬を合算して標準報酬月額が決定され、保険料は各事業所の報酬額に応じて按分される仕組みです。
雇用保険については、社会保険とは考え方が異なります。
原則として、雇用保険の加入要件は、一つの勤務先ごとの雇用条件によって判断されます。
一般的には、その事業所において「週所定労働時間が20時間以上」であり、「31日以上引き続き雇用される見込みがある」場合などに、雇用保険の被保険者となります。
そのため、例えばA社で週15時間、B社で週10時間勤務しており、合計すると週25時間になる場合でも、原則として二つの勤務先の労働時間を合算して雇用保険に加入することはできません。
また、A社・B社の両方で週20時間以上勤務している場合も、原則として二つの会社で重複して通常の雇用保険に加入するのではなく、主たる生計を維持する雇用関係について被保険者となる取扱いです。
つまり、「副業先でも週20時間以上働いているから、自動的に両方の会社で雇用保険に加入する」というわけではない点に注意が必要です。
複数の勤務先で働く人に関しては、65歳以上の労働者を対象とした特例があります。
これが、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」です。
65歳以上の労働者が、二つの事業所でそれぞれ週5時間以上20時間未満勤務し、その二つの勤務時間を合計して週20時間以上となる場合など、一定の要件を満たすと、本人の申出によって雇用保険の適用を受けることができます。
主な要件としては、二つの事業所に雇用されている65歳以上の労働者であること、対象となる二つの事業所それぞれで31日以上の雇用見込みがあることなどが必要です。
ただし、この制度は通常の雇用保険とは異なり、労働者本人がハローワークへ申出を行うことが必要です。また、制度上、雇用保険に加入できる事業所は二つまでとされています。
企業としては、高年齢の副業・兼業者を雇用している場合、「自社では週20時間未満だから雇用保険とは関係ない」と判断するのではなく、他社での勤務状況によってマルチジョブホルダー制度の対象となる可能性があることを把握しておく必要があります。
副業・兼業を行う社員の社会保険・雇用保険については、単純に「複数の会社で働いているから加入」「勤務時間を合計すれば加入」と判断することはできません。
社会保険については、各勤務先で加入要件を満たしているかを個別に確認することが基本です。複数の勤務先で加入要件を満たした場合には、「二以上事業所勤務者」として、各事業所の報酬を合算して保険料が決定されます。
一方、雇用保険については、原則として一つの勤務先ごとに加入要件を判断します。複数の勤務先の勤務時間を合算して加入できるわけではありません。ただし、65歳以上の労働者については、雇用保険マルチジョブホルダー制度という特例があります。
副業・兼業が増える今後は、採用時や労働条件変更時に、他社での勤務状況をどこまで確認するのか、また社会保険や雇用保険の手続きが必要になった場合にどのように対応するのか、社内ルールを整理しておくことが重要です。
副業・兼業者の労務管理は、本人の勤務状況だけでなく、複数の勤務先との関係を踏まえて判断する必要があります。
「社会保険の二以上事業所勤務届が必要なのか」「副業先でも雇用保険の手続きが必要なのか」など、個別のケースによって判断が分かれることもあります。判断に迷う場合は、早めに社会保険労務士へ相談し、適切な手続きを進めることをおすすめします。
社会保険労務士 髙田 登史子

Copyright © 2026 社会保険労務士事務所 Labor Partner All Rights Reserved.
東京都豊島区南池袋1-21-5 第7野萩ビルB1F TEL 03-4500-6229
powered by Quick Homepage Maker 7.6.0
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK