合同会社における職務執行者は社会保険の加入要件を満たす?役員との違いを分かりやすく解説

合同会社の登記簿謄本を確認すると、役員欄に個人名ではなく法人名が記載され、その後に「職務執行者」として個人名が記載されているケースがあります。

この場合、「職務執行者として名前が登記されている以上、その人も会社の役員なのではないか」「社会保険への加入が必要なのではないか」と疑問に感じる経営者の方も少なくありません。

しかし、合同会社の職務執行者と、その合同会社の役員とは必ずしも同じではありません。社会保険の取扱いについても、登記上の肩書だけで一律に判断するのではなく、実際の立場や報酬の支給状況などを踏まえて確認する必要があります。

今回は、合同会社における職務執行者とはどのような立場なのか、また社会保険の加入との関係について、具体例を交えながら解説します。


合同会社の「法人社員」と「職務執行者」とは?

合同会社では、株式会社の「取締役」にあたるような役割を担う者として、「社員」が会社の業務執行に関与します。

ただし、合同会社の社員は必ずしも個人とは限りません。例えば、法人が合同会社の社員となることも可能です。

この場合、その法人自身が実際に業務を行うことはできないため、法人社員は個人を選任し、その者が法人に代わって職務を執行します。この個人が「職務執行者」です。

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

【事例】

合同会社Aの社員として、

・株式会社B
・田中太郎

の2名(1法人・1個人)が登記されているとします。

そして、株式会社Bが合同会社Aにおける職務執行者として、「佐藤花子」さんを選任している場合、登記上は概ね、

「社員 株式会社B
職務執行者 佐藤花子」

といった形で記載されます。

この場合、合同会社Aの社員(役員として扱われる立場)となっているのは株式会社Bであり、佐藤花子さん自身が当然に合同会社Aの役員になるわけではありません。

そのため、「職務執行者として登記されている」という事実だけで、直ちに合同会社Aの社会保険の被保険者となるとは限りません。


職務執行者は社会保険に加入しなくてもよい?

職務執行者という立場だけをもって合同会社の役員として扱われるものではなく、それだけで社会保険の加入要件を満たすわけではないため、原則として職務執行者は社会保険の加入要件は満たさない形となります。

つまり、先ほどの事例で、佐藤花子さんが株式会社Bの職務執行者として合同会社Aの業務を行っていたとしても、「合同会社Aの役員だから社会保険に加入しなければならない」と直ちに判断されるわけではありません。

但し、職務執行者であれば、どのような場合でも社会保険に加入しなくてよいというわけではないという点には注意が必要です。

例えば、合同会社から職務執行者個人に対して報酬が支給されている場合や、実態として合同会社の業務に常勤で従事している場合などには、その具体的な勤務実態や報酬の内容を踏まえて、社会保険の加入対象となるかどうかが判断される可能性があります。

社会保険の適用関係は、登記上の名称だけではなく、実際にどのような立場で業務を行い、どこからどのような報酬を受けているのかも重要な判断要素となります。


社会保険の判断で注意したいポイント

合同会社の職務執行者について社会保険の加入要否を確認する際には、単純に「役員か、役員ではないか」だけを見るのではなく、次のような点を確認することが重要です。

・合同会社から本人へ報酬が支給されているか
・報酬の性質は、役員としての報酬なのか、従業員としての給与なのか
・実際に合同会社の業務にどの程度従事しているか
・常勤性があるか
・職務執行者としての立場以外に、合同会社との雇用関係等があるか

例えば、「法人社員である株式会社から給与を受けており、その法人の職務執行者として合同会社の業務に関与している」というケースと、「合同会社から本人へ毎月一定の報酬が支給され、日常的に合同会社の業務を行っている」というケースでは、社会保険上の判断が異なる可能性があります。

そのため、登記簿上の記載だけで『社会保険に加入しなくてよい』と判断するのは注意が必要です。

特に、報酬の支払い方や実際の勤務状況によっては、年金事務所への確認が必要になるケースもあります。


まとめ|職務執行者=社会保険加入ではないが、実態の確認が重要

合同会社において、法人が社員となっている場合、その法人が選任した個人が職務執行者として登記されることがあります。

しかし、職務執行者は、その合同会社の役員そのものではないため、職務執行者という立場だけを理由として社会保険の加入対象になるわけではありません。

ただし、本人に対して合同会社から報酬が支給されている場合や、常勤で業務に従事している場合などは、個別の事情によって社会保険の加入要否が判断される可能性があります。

合同会社の職務執行者については、「登記上の肩書」だけではなく、「誰からどのような報酬を受けているのか」「実際にどのような立場で業務を行っているのか」を総合的に確認することが重要です。

合同会社の設立や役員構成は、株式会社とは異なる部分も多く、社会保険の加入手続きを誤ると思わぬ遡及加入や保険料負担につながる可能性もあります。

合同会社の役員や職務執行者の社会保険加入について判断に迷われる場合は、登記内容だけで判断せず、報酬や勤務実態を確認したうえで、社会保険労務士へご相談されることをおすすめします。

社会保険労務士 髙田 登史子

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