過去に遡って社会保険に加入することはできる?資格取得と新規適用の違いを社労士が解説

「社会保険の加入手続きをしていなかったことに後から気づいた」
「本来の加入日まで遡って社会保険に加入することはできる?」
「会社を設立してから時間が経ってしまったけれど、今から手続きできる?」

このようなご相談を受けることがあります。

社会保険は、加入条件を満たした場合には原則としてその時点から加入する必要があります。そのため、手続きが遅れていたからといって、必ずしも「届出をした月から加入すればよい」というわけではありません。

一方で、過去に遡って社会保険に加入すること自体は可能です。

ただし、「従業員個人の資格取得」と「会社そのものの新規適用」では、考え方や必要となる確認資料が異なります。

今回は、社会保険の遡及加入について、社労士の立場から分かりやすく解説します。


従業員の「資格取得」は過去に遡って手続きできる

まず、すでに社会保険の適用事業所となっている会社で、従業員の資格取得手続きが漏れていたケースです。

例えば、4月1日から社会保険の加入要件を満たしていた従業員について、会社が資格取得の手続きを忘れており、8月になってから未加入であることに気づいたとします。

このような場合には、本来の資格取得日である4月1日まで遡って資格取得の手続きを行うことになります。

社会保険の被保険者資格は、加入要件を満たした日に発生するためです。

なお、資格取得届は本来、事実発生日から5日以内に提出することとされています。

「手続きが遅れたから8月から加入」という扱いにするのではなく、本来加入すべきだった日を確認して手続きを行うことが重要です。

また、遡って手続きをすると、その期間の社会保険料についても発生することになります。

そのため、数か月分の社会保険料をまとめて納付することになり、会社負担分だけでなく、従業員負担分についても給与からどのように精算するかを検討する必要があります。

さらに、遡及する期間が長い場合には、勤務実態や給与の支払い状況を確認するため、賃金台帳や出勤簿などの資料の提出を求められる場合があります。


会社の「新規適用」も過去に遡ることがある

次に、会社自体がこれまで社会保険に加入していなかったケースです。

例えば、法人を設立したにもかかわらず、新規適用の手続きをしていなかった場合などが該当します。

法人事業所は、原則として健康保険・厚生年金保険への加入が法律上義務付けられています。日本年金機構では、法人事業所などが適用要件を満たした場合、「新規適用届」を提出する必要があると案内しています。

この場合、単純に「今日から社会保険に加入したい」と申し出ればよいわけではありません。

過去の時点ですでに社会保険の適用要件を満たしていたのであれば、その時点まで遡って新規適用となる可能性があります。

日本年金機構の疑義照会でも、諸帳簿等によって事業実態を確認し、適用事業所としての要件を満たした日を特定できる場合には、その日を適用年月日とする新規適用を認める考え方が示されています。

つまり、「いつから会社が社会保険の適用事業所になったのか」を確認することが重要になります。


新規適用を遡る場合は「事実を確認できる資料」が重要

新規適用を過去に遡って行う場合、特に重要になるのが「本当にその時点から事業を行っていたのか」「その時点から社会保険の加入対象者がいたのか」を確認できる資料です。

例えば、

・賃金台帳
・出勤簿、タイムカード
・労働者名簿
・雇用契約書、労働条件通知書
・給与の支払い状況が分かる資料

などが確認資料となる場合があります。

特に、遡及する期間が現在の届出月をまたぐような場合には、年金事務所から過去の勤務実態や報酬の支払い状況を確認するための資料の提出を求められることがあります。

そのため、「とりあえず新規適用届だけ提出すれば終わる」と考えないことが大切です。

また、遡って加入する期間が長くなれば、それだけ社会保険料の負担も大きくなります。

会社負担分に加えて、従業員本人が負担する社会保険料についても精算が必要となるため、会社としては資金繰りや給与計算への影響も考えておく必要があります。


「何月から加入するか」は会社が自由に決められるわけではない

社会保険の遡及加入について、経営者の方からよくあるのが、

「3か月前から加入したい」
「会社の負担が大きいので、来月からにしたい」

といったご相談です。

しかし、社会保険の加入日は、会社が都合のよい日を自由に選べるものではありません。

原則として、社会保険の加入要件を満たした時点で資格が発生します。

そのため、過去に遡って加入する必要があるケースでは、「いつから加入すべきだったのか」を確認することが最も重要です。

また、新規適用の場合も、法人設立日や事業開始日、実際の事業の状況、被保険者となる方の勤務実態などを確認しながら、適切な適用年月日を判断する必要があります。

「社会保険料が高いから、できるだけ遅い日から加入したい」という考え方ではなく、本来の加入日を確認したうえで、適正な手続きを行うことが大切です。

社会保険の加入漏れは、後になって年金事務所の調査などで発覚することもあります。

その場合、過去の社会保険料をまとめて支払うことになり、会社にとって大きな負担となる可能性があります。

「会社を設立してから社会保険の手続きをしていない」
「従業員を採用したが、資格取得の手続きをしていなかった」
「社会保険にいつから加入すべきなのか分からない」

という場合には、早めに確認することをおすすめします。


まとめ

社会保険を過去に遡って加入することは可能ですが、加入するケースによって手続きの考え方が異なります。

従業員の資格取得については、本来資格を取得すべきだった日まで遡って手続きを行うことが基本です。

また、会社自体が社会保険に未加入だった場合の新規適用についても、過去の時点ですでに適用要件を満たしていたことが確認できれば、その時点まで遡って新規適用となる場合があります。

特に新規適用を遡って行う場合には、賃金台帳や出勤簿など、過去の事業実態や勤務実態を確認できる資料が重要になります。

社会保険の遡及加入は、加入日を間違えると社会保険料の負担額にも大きく影響します。

「過去に遡って加入したほうがいいのか」
「どこまで遡る必要があるのか」
「どのような書類を準備すればいいのか」

といった点でお困りの場合には、社会保険労務士に相談しながら手続きを進めることをおすすめします。

社会保険の新規適用や資格取得、遡及加入など、会社の状況に応じた社会保険手続きについては、社会保険労務士事務所Labor Partnerにご相談ください。

社会保険労務士 髙田 登史子

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