社会保険料は免除されるのに、雇用保険料は免除されない?意外と知らない保険料の仕組み

従業員が産休や育児休業を取得した場合、「休業中の社会保険料は免除される」と聞いたことがある経営者の方も多いのではないでしょうか。

一方で、「それなら雇用保険料も免除になるのでは?」と思われるかもしれません。

実は、社会保険料と雇用保険料では、保険料の免除に関する考え方が大きく異なります。

今回は、社会保険労務士の立場から、それぞれの仕組みと実務上注意したいポイントについて解説します。


社会保険料には「免除制度」がある

健康保険・厚生年金保険の社会保険料については、一定の要件を満たした場合に保険料が免除される制度があります。

代表的なのが、産前産後休業や育児休業等を取得した場合です。

たとえば、従業員が育児休業を取得し、所定の要件を満たした場合、従業員本人だけでなく、会社負担分についても健康保険・厚生年金保険料が免除されます。

また、免除期間については、単純に「その月だけ保険料がゼロになる」というだけではありません。

厚生年金については、保険料が免除された期間も、将来の年金額を計算するうえでは保険料を納めた期間として扱われます。

つまり、育児休業を取得したことによって、将来の年金受給額がそのまま不利になるわけではありません。

なお、社会保険料の免除を受けるためには、会社側で所定の手続きを行う必要があります。

「育児休業を取得したから自動的に免除される」と考えず、会社側で適切な届出を行うことが重要です。


雇用保険料には、社会保険のような「免除制度」はない

では、雇用保険料はどうでしょうか。

結論からいうと、雇用保険には、産前産後休業や育児休業を取得したことを理由として、社会保険料のように保険料そのものを免除する制度はありません。

ここが社会保険との大きな違いです。

ただし、ここで注意したいのが「免除されない=休業中も必ず雇用保険料を支払う」という意味ではないことです。

雇用保険料は、基本的に従業員に支払われる賃金を基礎として計算します。

そのため、休業中に会社から賃金が支払われていなければ、そもそも雇用保険料の計算対象となる賃金がないため、結果として雇用保険料も発生しません。

一方、休業中であっても会社から賃金が支払われている場合には、その賃金が雇用保険料の計算対象となることがあります。

つまり、

「社会保険料」=一定の要件を満たせば「免除」という制度がある

「雇用保険料」=「免除」ではなく、支払った賃金を基礎として保険料を計算する

という違いがあります。


「免除」と「保険料が発生しない」は別物

この違いは、給与計算を行う際にも非常に重要です。

たとえば、育児休業中の従業員について、

「社会保険料も雇用保険料も休業中だから免除」

と処理してしまうと、制度の理解としては正確ではありません。

社会保険については、要件を満たして会社が手続きをすることで「保険料免除」となります。

一方、雇用保険については、休業中に賃金の支払いがなければ、保険料を免除するのではなく、保険料の計算対象となる賃金がないため保険料が発生しないという仕組みです。

この違いを理解しておかないと、給与計算や年度更新などで処理を誤る可能性があります。

特に、育児休業中に一部の賃金や手当を支給しているケースでは注意が必要です。

「休業中だから雇用保険料はゼロ」と一律に判断するのではなく、実際に何の賃金を、いくら支払っているのかを確認する必要があります。


まとめ:社会保険と雇用保険は「免除の考え方」が違う

社会保険料と雇用保険料は、どちらも会社が給与から控除することが多い保険料ですが、その仕組みは同じではありません。

社会保険では、産前産後休業や育児休業などについて、法律上の要件を満たせば保険料の免除を受けられる制度があります。

一方、雇用保険には、社会保険のような休業を理由とした保険料免除制度はありません。

ただし、雇用保険料は賃金を基礎として計算するため、休業中に賃金の支払いがなければ、結果として保険料が発生しないことがあります。

このように、「保険料がゼロになる」という結果が同じでも、その理由は全く異なる場合があります。

育児休業や産前産後休業などに伴う給与計算では、社会保険・雇用保険それぞれのルールを正しく理解することが重要です。

休業者が発生した際の社会保険料免除の手続きや、休業中の給与・保険料の計算について不安がある場合には、社会保険労務士へご相談ください。

社会保険労務士 髙田 登史子

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