短時間の正社員なら社会保険に加入できる?「名ばかり正社員」に対する資格認定が厳格化

「勤務時間はかなり短いけれど、正社員として雇用すれば社会保険に加入できる」

このような考え方で、個人事業主やフリーランスなどを形式的に「短時間勤務の正規型労働者」として雇用し、社会保険に加入させるケースについて、厚生労働省が新たな通知を出しました。

今回の通知では、雇用契約書の形式だけではなく、実際にどのような仕事をしているのか、どの程度働いているのか、報酬がどのように支払われているのかといった実態を踏まえて、健康保険・厚生年金の被保険者資格を判断する考え方が明確化されています。

「うちは大丈夫」と思っている企業でも、社会保険の加入方法について一度確認しておく必要があります。


今回、何が問題になっているの?

今回問題となっているのは、個人事業主やフリーランスなどを、勤務時間が極端に短い「正規型の労働者」として形式的に雇用するケースです。

例えば、会社から労働者として少額の報酬を支払う一方で、その会社や関連法人に対して「会費」「コンサルタント料」「勉強費」などの名目で、それを上回る金額を支払わせるような仕組みです。

このような方法では、実際には会社から受け取る労働報酬よりも、会社側へ支払う金額の方が大きくなってしまいます。

その結果、実質的には会社との雇用関係が十分にあるとはいえないにもかかわらず、形式上は社会保険に加入しているという状態が生じる可能性があります。

厚生労働省は2026年9月14日付の通知で、このような不適切な事例について、被保険者資格の判断基準を明確化しました。


「正社員」と書いてあれば社会保険に加入できるわけではない

健康保険・厚生年金の被保険者資格については、単純に雇用契約書に「正社員」と書いてあるかどうかだけで判断されるわけではありません。

重要なのは、事業所との間に常用的使用関係があるかどうかです。

今回の通知では、特に次のようなケースについて注意が必要とされています。

・労働者として受け取る報酬を上回る金額を、会費等として会社や関連法人に支払っている

・個人事業主としての業務委託費などが、実質的に労働報酬の原資となっている

・会費等が報酬と同額以下であっても、報酬の大部分を会費等が占める状態が常態化している

・1週間または1か月の労働時間が常態的に極端に短い

・実際の業務が自己研さんやアンケート回答、単なる協力・依頼程度にとどまっている

・具体的な指揮命令を受けて労務を提供しているとはいえない

こうした事情がある場合、形式的に「正社員」としていても、実態として社会保険の被保険者資格を有しないと判断される可能性があります。


一般的な「短時間正社員」と今回の問題は分けて考える

ここで注意したいのが、短時間勤務だから社会保険に加入できない、という話ではないという点です。

例えば、育児や介護、治療などの事情によってフルタイム勤務から短時間勤務へ変更している正社員など、実際に会社の指揮命令のもとで継続的に働いているのであれば、今回の通知が直ちに問題となるわけではありません。

また、社会保険の適用については、短時間労働者に対する適用拡大も進んでいます。

現在、一定の企業規模等の要件を満たす事業所では、週の所定労働時間20時間以上などの要件を満たす短時間労働者が社会保険の加入対象となっています。さらに、今後は企業規模要件も段階的に縮小される予定です。

つまり、今回のポイントは「短時間勤務=社会保険に加入できない」ということではありません。

実際にはほとんど仕事をしていない人を、社会保険加入のためだけに形式的な正社員として扱うようなケースが問題となっているのです。

そのため、企業としては「正社員だから大丈夫」「契約書にそう書いてあるから大丈夫」と考えるのではなく、実際の勤務実態を確認することが重要です。


会社が確認しておきたいポイント

今回の通知を踏まえると、会社としては、社会保険の資格取得手続きを行う際に「書類上の雇用関係」だけを見るのではなく、実際の働き方についても確認しておくことが大切です。

例えば、

・実際の勤務時間はどの程度なのか

・どのような業務を行っているのか

・会社から具体的な指揮命令を受けているのか

・毎月の報酬は労務提供の対価として支払われているのか

・会社や関連法人に対して、別名目の費用を支払っていないか

・業務委託契約と雇用契約が混在していないか

といった点を確認してみましょう。

特に、雇用契約書だけを整えて、実態が伴っていないケースは注意が必要です。

社会保険の適用については、今後も適用範囲の拡大が予定されているため、「できるだけ社会保険料を抑えたい」という理由だけで勤務形態を設計するのではなく、実態に合った雇用契約・報酬・勤務時間を設定することが重要です。


まとめ

今回の厚生労働省の通知では、短時間勤務の「正規型労働者」として形式的に雇用されている個人事業主等について、社会保険の被保険者資格を判断する際の考え方が明確化されました。

社会保険の資格は、雇用契約書上の肩書きではなく、実際の勤務状況や報酬、業務内容などを総合的に見て判断することが重要です。

「正社員として雇用しているから問題ない」と考えるのではなく、実際の働き方と契約内容にズレがないか、この機会に確認しておきましょう。

社会保険の加入について「この働き方で加入させてよいのか」「雇用契約と業務委託契約が混在しているが問題ないか」など、ご不安がある場合は、社会保険労務士にご相談いただくことをおすすめします。

社会保険労務士 髙田 登史子

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